美味しい税制に惹かれて多くの大富豪が住居を構えるスイス。
だが、このところ外国からの富豪を対象にした契約式の
見積課税に対する国内外の批判を受けて、この税制を
2倍に引き上げるべきだといった議論が巻き起こっている。
スイス各州の財政局長が集まる各州財政局長会議
( KKF/CDF ) はこの税制見直し案を受けて、自国の税制度の
再検討とともにルクセンブルグやモナコといった租税回避地と
比較研究を行い、この議論をさらに検討していくと発表した。
この会議はフランスの大ロックスター、ジョニー・アリデー氏が
「フランスの重税 ( 収入の70%近い ) を逃れて節税のために
スイスの高級リゾート地、クシュタードに引っ越す」と発表した
のが付け火になった。これを受けてフランスの政治家から
スイス批判が相次ぎ、スイスの左派も便乗してこの税制を
厳しく非難する声が上がった結果開かれたもの。
スイスの大富豪収入
現在、スイスには特別な税制に惹かれて多くの著名人が
住んでいる。英国人歌手のフィル・コリンズ氏、米国人歌手
のティナ・ターナー氏、仏女優のイザベル・アジャーニ氏を
はじめスポーツ界からはF1レーサーのミヒャエル・
シューマッハー氏や仏テニス選手のアメリ・モレスモ氏
などだ。
過去には女優オードリー・ヘップバーン、映画監督の
チャーリー・チャプリンや俳優のリチャード・バートンらがスイス
で晩年を過ごしたことは有名だ。
スイスに見積課税を払っている外国人富豪は3600人ほどおり、
平均で7万5000フラン ( 約732万円 )
の税金を払っている。このため、ざっと毎年3億フラン(約290億円)
の税収がスイスの懐に入ることになる。
ドリス・ロイタルト経済相が先月、フランス語圏のテレビ番組
に出演中にこの税制を「不公平」と非難したこともこの議論に
油を注いだ。ロイタルト経済相は仏ロックスター、アリデー氏
とスイスのテニス選手ロジャー・フェデラー氏は同じぐらいの
収入にも関らず、フェデラー氏はアリデー氏の10倍の税金を
払っていると述べたからだ。
大衆紙ブリックによると両者ともおよそ1000万フラン
(約9億7000万円)の年収だがフェデラー氏が税金を300万フラン
(約2億9000万円) も納めている一方、アリデー氏は30万フラン
(約2900万円) しか払っていないという。
スイスへの恵み?
この見積課税制度は26の各州ごとに大きく違う。基本的な計算方法
は外国人がスイスで購入する家、または借りる家の年間賃貸料を
5倍したものに税金 ( 所得税 ) がかけられる。つまり、富豪の収入
ではなくスイスでの維持費が税制の対象
となる。所得税は各州で平均して30%に当たる。
「忘れてはならないのはこの高額な税金が納税者の収入の変化に
関らず毎年スイスに支払われるということです。資産家たちは、
スイスでの消費も大きいですからスイスへの 『恵み』と言えるでしょう」
とあるスターの弁護士は説明する。
連邦制を厳守
もし、各州財政局長会議で提案された見積課税の値上げが決定
されたとしても、それは原則的な方針を示すもので各州が必ず従う
必要はない。各26州の間での特別な協定が結ばれるか、連邦法
に加えられなければ、法的拘束力はないからだ。同会議では見積
課税の契約ができる富豪の最低条件額についても見直しの声が
出ている。
しかし、同会議は各州が独自の税制を敷くことが地方自治の柱で
あり、連邦制の土台であるとして、税制を連邦法で均一化すること
に反対している。このため、今後も外国人富豪はまだまだ、枕を
高くして眠ることができるというわけだ。